環境農政常任委員会の報告の続き。一貫して取り組んでいる
東京湾の
生態系を回復する僕らの課題です。
東京湾は自然のままならきっといまも豊かな資産物の宝庫なのですが宮ヶ瀬ダムの約半分ほど
海底がえぐられており、そこにほぼ酸素のない水のかたまりが流入して生きものを死滅させています。その対策に二枚貝をまいているけれど
東京湾を取り巻く4000万人の
首都圏の自治体が共同行動すべきではないのか、など議論を引き出し強い要望をした先月の議会でした。
第7次栽培
漁業基本計画の対象種と
東京湾における
貧酸素水塊への対応について
質問(松崎委員)
先般、
東京湾の
生態系の問題についてとりあげさせていただきましたが、今回第7次栽培
漁業基本計画の関係も含めて
貧酸素水塊についても引き続き取り上げさせていただきたいと思います。
栽培
漁業基本計画の改定についての当局からの報告がありました。この計画は、本県の沿岸
漁業振興の柱となる栽培
漁業の進め方を決める重要なものでございます。その中でもどのような魚種に取組んでいくのかは重要なことと考えております。
また、栽培
漁業を円滑に進めていくうえで、漁場の環境は非常に重要でございます。特に
東京湾の
貧酸素水塊は、横浜市の漁業者をはじめ、東京湾内で漁業を営む方々にとって、大きな問題となっております。
貧酸素水塊の問題は、解決に時間がかかるということは伺えるわけでありますけど、東京湾はですね
首都圏全域、幅を広く考えると四千万人の方々の共有財産であってかけがえのない
生態系、命のゆりかごであります。そういった意味ではさらに漁業者への筋目の通った対応も県として考える必要があるという側面もあります。そこで、栽培漁業対象種と併せて、
貧酸素水塊について何点かお聞きします。
まず、今回、説明のございました栽培漁業基本計画にある本県の栽培漁業対象種はどのような視点で選定をしたのでしょうか。
答弁(水産課長)
栽培対象種の選定ということでございますけども、漁業者等のニーズ、それから稚魚の生産・放流の実現可能性、放流の投資効率といった複数の視点から検討を行なっております。
まず、漁業者等のニーズの把握につきましては、各漁協、水産関係団体および沿海市町につきましてもアンケートを実施いたしまして、さらに漁協へは直接の聞き取りを行った上で、意見のとりまとめをしてございます。
さらに、稚魚の生産・放流の実現可能性につきましては、全国での生産の状況、いわゆるどのような技術が開発されているかということ。それから本県の生産施設の規模条件、作る上での施設の能力等の検証を行いまして、一方、放流の投資効率については、生産のコスト、魚価、回収率等から試算を行った上で、栽培対象種の候補の絞り込みを行ってございます。
質問(松崎委員)
今までも栽培漁業の対象種であった「かさご」とか「めばる」を今回、新たに、本県での生産技術開発に取り組むとしているわけですけど、取り組む理由はなんでしょうか。
答弁(水産課長)
まず、「かさご、めばる」でございますけども、この魚種は東京湾と相模湾の沿岸域で、幅広く底曳き網だったり、刺し網だったり、あるいは定置網というような漁具で漁獲されております。
また、「かさご、めばる」は、磯につく魚でございまして、通称、根魚と言われておりますけども、非常に魚価が高く、放流後も放流場所近くに留まるということから、漁業者にとっても非常に人気が高い魚種でございます。従来は他県産の稚魚を購入いたしまして放流が行われてきました。
今回は、漁業者のニーズ等の調査におきましても「かさご、めばる」をさらに放流して欲しいと強い要望がございます。今後はですね稚魚を安定的、かつ一定量を入手する必要があることから、さらに遺伝的多様性等を確保する上からも、本県産の親から稚魚を生産する必要があるいうことを検討いたしまして、生産技術の開発に取り組むということにいたしました。
質問(松崎委員)
確かに「かさご」なんかも私も大好きで、おいしいですよね。魚を地場で本当に優しく、魚を本当に愛していて、食べてもらいたいなと思ってうまく料理をしながら出してくれるお店とか職人の方とか、お話をしていると本当にこの町とこの海が大好きで、そしてそこで獲れたものを味わって欲しいと願って出しておられるということがとてもよくわかるし、そういうところにやはり神奈川県がきちっとコミットしていって、それで結果を出そうとしてることは、私は質問ではどちらかというとどうなんだと聴くんですけど、私はなんとなくすばらしいなというように率直に思います。
それでさらにお聞きしますけど、今回、新たに栽培漁業対象種として、「なまこ」を選定していますが、これも私大好きなんですけど、このナマコを選定した理由はなんでしょうか。
答弁(水産課長)
「なまこ」でございますけども、近年ですね東京湾で漁業の対象種として着目を浴びるようになりました。過去は獲れてもあまり海に捨てていた状況だったのですが、平成15年から本格的に漁獲対象となりました。
「なまこ」なんですけども、東京湾から三浦半島にかけてであり、主に小型の底曳き網で漁獲されておりまして、あるいは一部では
海底に潜って獲るという方法で漁獲されてございます。
獲るようになりました結果から、当初200トンぐらいあった漁獲がだんだん減ってきまして現在では100トンまで減少しているということで、資源の減少が漁業者の仲間から危惧されてきた、ということがございまして漁業関係者からはぜひ「なまこ」の資源を回復して欲しいと強い要望がございました。
水産技術センターでは、平成25年度から、昨年度からですね試験的に「なまこ」の生産技術の開発に取り組んでまいりました。そういう中で漁業者の要望も非常に強く、今後、東京湾のひとつの対象種として位置づける必要があるということで、今回の栽培計画に正式に対象種として位置づけたという経緯がございます。
質問(松崎委員)
この東京湾の漁業者が要望しておられる「なまこ」の資源回復、私も目の前が海という金沢区で暮らしていて、そこで獲れた魚を食べている者の一人として、重要だと思っております。一方、現在、東京湾で漁業されている方、そしてまた東京湾沿いに住んでいる、あるいは東京湾に遊びに来る山の方の方々もそうですけど、大きな問題と認識しているのは
貧酸素水塊の出現でございます。そこで、確認の意味で、貧酸素水塊とはどのような現象なのかお聞きします。
答弁(水産課長)
貧酸素水塊と申しますのは、東京湾などの閉鎖的な海。大阪湾とか伊勢湾も入ってきますけど、そういう湾で大量に発生したプランクトンが沈みまして、それが
海底に沈んでいます。その死骸を微生物が分解するときに大量に酸素を消費するということから、その
海底を中心に酸素が不足してくるという現象でございます。
海底の微生物の活動が盛んになりますのは、ちょうど水温が上がります6月から10月の初旬くらいまででございまして、この時期が非常に貧酸素水塊が大きくなる時期でございます。
この時期は表層水の水温は高くなりまして、底層の水温は低いことから、表層と底層の海水の動きがなくなります。そういう形で水の動きがほとんどなくなる状況でございます。
ただ、風等が吹く、あるいは波浪によって
海底の海水がかき回されることによると、今度その無酸素水が広がっていくという現象も現れるということで、さらに影響も大きくなるということでございます。
質問(松崎委員)
先だっての常任委員会があったと思うのですけど、そこに加えて東京湾はさらにかつて大量の
海砂をどんどん掘ったと、削ったということで、いわばえぐれた状態があるということでそのえぐれた量がおおよそ宮ヶ瀬ダムの半分ぐらいなんだという答弁が確かあったと思うのですが、そのことはこの貧酸素水塊とどのような形で関係するのでしょうか。
答弁(水産課長)
お話させていただきました海底にあるときに、くぼみがありますとさらにそのくぼみに貧酸素水塊が停滞いたします。そういう状況で東京湾全部が窪地ではないのですけどもそういう場所があることによってなかなか貧酸素水塊が動かなくなる状況があることで影響が大きくはなっているという状況でございます。
質問(松崎委員)
それをなくす、それに対して抜本的な対策を打つというのはどういうことを意味していますか。
答弁(水産課長)
先ほどもご説明させていただいたように、海の
生態系の中で当然生物がいてその生物が食べる餌であるプランクトン、あるいは栄養塩類というのは必要でございますのでそれをなくすことはできません。ただ、それが過剰に生産されたときにそれが沈殿して貧酸素水が生物の分解によって発生するということですので、できるだけプランクトン量なり栄養塩類を吸収するというのがひとつの方法であると考えます。
一方は、できるだけ海水の交換がうまくいくように窪地を埋められればいいのですけども、それはなかなか非現実的な部分があるものですから水産サイドとして取り組める方法としてはやはりプランクトンの死骸なりもしくは栄養塩類をできるだけ生物的に回収していくという方法ではないかというふうに考えております。
質問(松崎委員)
最後のところの生物的に回収を議事録に載っても県民からは訳がわからないのですけども、もう少し普通の人が分かる言葉で答えてもらえますか。
答弁(水産課長)
そこで考えられますのがいわゆる二枚貝等の貝です。貝は基本的にはプランクトンなり栄養塩類を濾して餌としていますので、そういうものを増やすことによっていわゆる富栄養化を減らすことができるということです。その取り組みをもう始めている部分もあり、その対策を東京湾の指導の一つとして考えております。
質問(松崎委員)
よくわかりました。ありがとうございます。
モニタリングですね、貧酸素水塊のモニタリングを行っているというのはこの間確か、水産技術センターに伺ったときに米山所長さんからもお話をいただき具体的なグラフなんかを見せていただいて大変深刻な状態ということがグラフでもはっきりとでていたわけですけど、この漁業者をなさっている方とか、県民の方々に対する情報提供というのはどういうふうに行っているのか。
答弁(水産課長)
今お話がございました、基本的には酸素の量を測る指標といたしましては、溶存酸素量というものを測る方法がございます。これは東京湾に何点か測点がございましてそこで測ったものを「東京湾溶存酸素情報」という一つの海図に落としてございます。これを関係業者にファックス、もしくは水産技術センターのホームページに掲載いたしまして、情報提供を行っています。
質問(松崎委員)
もう一点お聞きしたいのですが、貧酸素水塊が現れた場合、東京湾の現場というか我々はそこで見ているわけにはいかないのですけど、海底とかその辺で起きている現象というのはどういう現象が起きているのですか。酸素がなければ普通生き物は生きられないので一体何が起きているのかちょっとお聞かせいただきたい。
答弁(水産課長)
ある一定の水量の中の酸素量が減ってきます。そうすると酸素が少なくても生きられる生物。そうじゃない生物はその水域から逃げていきます。逃げ切れなかった場合には死んでしまうという状況と私どもは理解しております。
質問(松崎委員)
それが宮ヶ瀬の半分ぐらいのえぐれたところで、貧酸素という状態というのが割と続く状態というのがあるのかなと思いますし、そうすると漁業に限定した質問をしているつもりはないのですけど、漁業というかそのさらにその前提となっている
生態系そのものが大変な危機にあるというふうに受け止めざるを得ないわけであります。
そこでお聞きしますが東京湾の
生態系ということになってくると神奈川県一県だけでの対応というのは自ずと限界があろうかというふうに思います。先ほどは、PM2.5で大気の話をさせていただきましたが、これは水質の問題でございまして、東京湾でございますから東京都、あるいは千葉県、あるいは国などとの連携というのも、もっともっとやっていかなければならないのではないかと思うのですけど、現状今どんな形で連携されていますか。
答弁(水産課長)
現状でございますけども、東京湾、今お話ございましたように、囲まれていますのは東京都と千葉県でございます。千葉県でも貧酸素水塊の調査を実施してございます。リアルタイムの状況を神奈川県と千葉県との調査を一緒にしながら、また、本県が観測していないデータの日については、千葉県のデータを活用するなど、お互いの情報交換を密には行っております。
また、東京湾の漁業再生に向けた水産・海洋研究の充実と推進を目的として、独立行政法人水産総合研究センター増養殖研究所というところが主体となりまして、「東京湾研究会」というのを平成19年度より立ち上げております。
この中で、貧酸素水塊についての議論がされてございまして、先ほど私説明させていただきましたけど、浅海域でのアサリなどの二枚貝を復活させるということについての提言がございます。
こういう提言などを各県が、実施に移していくということの中での連携はこれから始まっていくのではないかなと考えております。
答弁(大気水質課長)
今答弁の中で、水産サイドの取組の話がありましたが、もう少し大きな話ということで、水質を所管する立場からお答えします。
貧酸素水塊の発生を減らすためには、陸域からの有機汚濁と栄養塩の窒素、りん、の流入を減らす必要があります。
東京湾では、九都県市と連携して、ということになりますが、水質汚濁防止法に基づく総量削減、ということで昭和55年3月から第1次東京湾総量削減計画により汚濁負荷量の削減に取り組みを開始しました。
当初はCODのみが対象でしたが、赤潮や貧酸素水塊といった富栄養化に伴う環境保全上の問題に対応するため、平成14年7月に策定した第5次計画からは、「窒素」と「りん」を対象に追加しています。
具体的には、COD、窒素、りんの削減目標を定め、達成の方策として、工場・事業場への総量規制基準の適用であったり、下水道や浄化槽などの生活排水対策であったり、あるいは農地の汚濁負荷削減対策や畜産排水対策、こういった総合的な削減計画の中で取組を進めているところでございます。
また、九都県市が首脳会議の中で連携した取組として、モニタリング等も共同で行っております。
質問(松崎委員)
確かにその環境問題に関して神奈川県というのは後ろ向きではないと思います。むしろ上乗せ規制をしたり様々な形でがんばってきたというふうに、自分自身も県会議員だからというわけではなく、自画自賛という意味でもなく本当にそれは事実そうだったと思うのですよ。神奈川県というのは、地方自治体のうちでも環境問題に関して先進的な行政であると私も思っています。しかし、現実に起きている東京湾この実態というのは大変深刻だと思うのですね。で、いままでの取り組みで良かったのかなということをやっぱり一度立ち止まってどんなふうにすればより効果的で確実な対策を取れるのかということを一度立ち止まって、せき止めて考えてみる必要も私はある、そういう時期に来ているのかなと思うわけです。
一方で漁業振興ということをやっぱり考えていかなければいけないということでございますので、貧酸素水塊の問題を抱えながら東京湾の漁業振興ということをなんらかやはり取り組みを考えていく必要があると思うので、そのあたりについてどういうふうに考えているのか、お聞かせいただきたいと思います。
答弁(水産課長)
東京湾でございますけども、ご存じのとおり経済の発展とともに港湾の整備が進み、いわゆる当初ありました干潟とか浅場、そういうものがなくなり、また具体的要因としては生活排水による富栄養化が進んだということで、漁業者にとって非常に厳しい環境にあることは間違いないと思います。
そういう中で、先ほどからご説明させていただいている一つとしては、やはり資源を増やすという方法としては、栽培漁業を進めており、さらにその受け皿となる漁場環境の整備もしていく必要があるだろうというふうに考えてございます。
先ほど来、何度となくお話させていただいておりますけども、やはり浅海域でのいわゆる貝類による浄化能力を高めるという方法、それからもう一つはですね、水産分野以外の分野でのいわゆる港湾部での岸壁の構造の水産に対する優しい構造、そういうものの議論をさせていただきながら改良、工夫を進めていく必要があるのではないかなと思っています。
今後とも、関係機関と協調しながら、東京湾の漁場環境づくりということで、浅場や干潟の造成、港湾施設の水産対応型の提案などをさせていただきたいと思います。
質問(松崎委員)
確かに金沢区地元でそこにおきましても、横浜市はかつて自然海岸があったわけで金沢でもその海水浴場などはもう写真で見るしかないわけですけど、ニースとかあちらの美しい海岸線を想起させるようなすばらしい海水浴場だったんだなと、今はもう写真でみるしかありませんが、思います。
横浜市の唯一の自然海岸は我が金沢区にございまして、野島の海岸がもう最後唯一でございます。これも潮の満ち引きによりますけど短い時で20mぐらい、長いときでも50mぐらいあるかなというぐらいであとは横浜市はすべて人工の海岸になってしまっています。そういった意味でいま水産課長から答弁があったように、干潟とか浅場とかそういうものを再造成していく自然な形で自然に戻していくということも可能な限りこれは進めていく必要があるかなと思わせていただきました。
要望(松崎委員)
対策をいろいろと展開していく際に、一度せき止めて今この段階で、東京とか千葉との連携をもっと深めてもらいたいし、また共通認識を持って貧酸素水塊に対しては強力な取り組みが必要だと思います。
同時に
江戸前ということで非常にローカルプライドの意味もあって
江戸前ということで魚介類を提供してきた多くの漁業者の方々が東京湾にはおられて、それは県境を越えても、佃の方まで行ってもですねアナゴについてはうちなんだとおっしゃる方々が大勢、今もいらっしゃるし、漁業もされている方もおられるし、あるいは富津のところでは名物のタコが獲れているということもございますし、あるいはまた漁業という意味ではないですけど、金沢に来られた方々は海の公園でアサリを獲って楽しんで帰っておられます。ここは全く種を蒔くこともなく自然に次々と湧いてきて一日一番多いときでビーチに10万人ぐらいいらっしゃるという状況ですけども、やはりそうやって海に親しみつつ東京湾というものから恵みを分けていただいて、またそれをお返しをするという循環というものが続いていって欲しいわけです。
そういうことでは生態系、そしてまた水産資源という意味での取組もしっかりと行っていただきたいと思います。
- 2015/01/12(月) 23:22:05|
- 横浜市金沢区
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2004年6月定例会 次世代育成特別委員会での質疑のまとめ
子どもの「
うつ傾向」に総合的取り組みを確約させる
松崎:
首都圏の小学校高学年の児童約3000人を対象にした
筑波大学の
調査で、心に負担を負っている「抑
うつ傾向」にある子が男子で10%、女子で13.5%に上っているという、衝撃的な
調査結果が第一回日本
うつ学会で発表された。「活動から来る喜びの感情が低下している」「よく眠れない」「やろうと思ったことがうまくいかない」というような子どもたちがとても多いということが判った。青少年の心の問題を象徴的に表す
調査結果だ。こうした子どもたちの「
うつ傾向」の
調査をこれまで県は行ったことがあるのか。
県側:青少年行政として、この種の
調査を行ったことはない。衛生部や
教育委員会も行っていない。
松崎:多くの児童が抑
うつ傾向にある、とされているが、特徴的な症状とその要因について、どのようなことが考えられるのか。
県側:
うつ状態の特徴としては、意欲が衰え、行動することが億劫になり、興味や関心がなくなる。思考面では考えが進まなくなり、判断力が低下する。さらに、食欲低下や睡眠障害の症状を示すようになる。要因としては、大人の場合、まじめで融通の利かない性格の人、身近な人の死や失業などの精神的ストレス、病気といった肉体的ストレスが加わると発症しやすい。子どもの場合、年齢が低いほど「うつ状態」を言葉で表現することは難しく、症状や行動として睡眠障害や食欲不振、下痢、便秘、腹痛などが現れ、
ひきこもりや
不登校、動作緩慢、多動になったり攻撃的になったりする。要因としては、自信喪失や喪失体験、災害などの恐ろしい体験、また多動性障害や行為障害などが背景にある場合もある。
松崎:この
調査結果からは、体系だった取り組みが必要と考えられるが
教育委員会としてはどのように受け止めているか。
県側:数値の大きさに驚いているし、各学校で日ごろ児童の状況を的確に把握することが大切だと考えている。
松崎:学校では、今後どういう支援が必要だと考えているのか。
県側:小学校では今年度から新たに県内11市町村の26校に「子どもと親の相談員」を配置した。中学校には臨床心理士を中心にスクールカウンセラーを昨年度に比べて倍増し、180校に配置している。このスクールカウンセラーは必要に応じて地域内の小学校にも対応する。児童にうつ傾向が心配される場合は、教員とスクールカウンセラー、場合によっては子どもと親の相談員などが緊密に連携し、必要に応じて医療機関の受診を勧めるなど、適切に対応していく。現在スクールカウンセラーの配置は220校中180校であり、これをさらに進めていく。
松崎:うつ傾向の子どもの存在を認め対応していくということか。
県側:そうだ。
松崎:こうした問題は本来、
精神医療の面からしっかり取り組んでいくべきだが、どのように考えているのか。
県側:うつ病はきちんと治療すれば回復できる病気であるが、うつ病になっている方が自分の性格のせいにしてしまい悩み続けるという状況があって、周囲の方がそのサインを受け止めることが重要である。特に児童生徒に対しては、子ども自身では不調を訴えられないという特徴があることから、指導を担当する教員、養護教諭、相談関係機関の職員を対象に、治療、支援の工夫等の具体的な事例を基にしたセミナーを開催していく。また、市町村とも協力し、相談、広報体制等の充実に努めていく。
松崎:子どもたちの心の問題については、周囲の理解に基づき、地域社会で支えていくことが大事だと思う。そのことは、子どもたちの心の問題に共通する課題である。県として今後どのように取り組んでいくのか。
県側:まったく同感だ。うつ傾向の子どもたちを特定の個人や家族だけで支えることはかなりつらいものと思う。県としては、こうした問題は地域のなかでその児童や家族を支えていくことが求められていると受け止めている。また、うつ症状はきちんと治療することで治る病気ということなので、周囲が協力して支えていくことが、回復に向けた一歩になるはずだ。子どもたちが自分に自信をなくしているさまざまな状況のなかで、うつに限らず、青少年の心の問題への対応には、地域のなかで安心できる居場所や人間関係をどう作っていけるか、心のよりどころとなるような地域づくりが基本となる。
不登校や
ひきこもりへの取り組みの中で、地域のなかで、子どもたちの仲間作りや自信を取り戻すことを目標として、子どもたちを支えている多くの人材や民間活動も立ち上がってきた。県も市町村も、そういう人たちと手を取り合って、地域の中で安心できる居場所を作っていくことが大切であり、県としてそうした地域の居場所作りをどう支援していくかを課題として受け止め、考え、行動に移していく。
- 2013/06/29(土) 06:38:24|
- こども
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